倉重 光則

Mitsunori KURASHIGE

1968年のある日、、、、。絵を書くために敷き詰めていた新聞紙の上に、天井の蛍光灯を置いてみたところ、蛍光灯のヘリにある新聞紙の文字が明るすぎて消えていた。ものが見えるようにするためのものを読めなく消している。光は新聞に書かれた文字とその意味さえも消していた。その体験は私に強烈な快感を与えてくれた。蛍光灯の光はものを見せるための機能と同時にものを消すという作用を持っている。その事実を発見した。消滅する現実、それは蛍光灯の光によって与えられた現実である。作品を作るということは自己内部(主体)としてイメージを再現することではない。むしろ、体験して与えられた現実と事実から出発する。そこから生まれ、生産される意味は、「いま、ここ」という同時空間の中で現れる。作品を作るということは自動的に意味を生み出す装置と状況を設定することである。この時間的な持続の中で作家としての主体を他者として存在させることが重要である。(2014年/奈義町現代美術館ギャラリーの個展カタログより)