#20 イタリアの三日月 – luna crescente

出品作家:東亭 順白大 阝大久保 あり五島 一浩土屋 貴哉水谷 一

企画:東亭 順水谷 一


会期:2021年2月27日(土) - 2021年3月28日(日) / 土日祝日のみ開場 14:00-18:00

アズマテイプロジェクト#20では、水谷一と東亭順による共同企画展『イタリアの三日月』を開催いたします。新型コロナウィルス流行の影響により、去年4月に予定していた#13グループ展『モノクロームの欠片』を2ヶ月遅れで開催しましたが、それ以降は順調に展覧会を重ねることが出来ました。しかし今、ちょうど一年前、2020年2月に開催した#11グループ展『before sunrise after dark』開催時の不穏な空気が再び社会を包み始めています。これまで特別視されていなかった「対面」という言葉は生活に浸透し、もはや特異な様式に定着しつつあり、オンラインでの打ち合わせは元より、インストール、表現形態も呼応するように変移をはじめています。本展では、移り行く社会状況やその構造、人の認知機能に対し分析的かつアナロジカルな観点を持ち、真摯で深刻に自身の美術表現を捉え創作活動を行う昭和44~51年生まれのアーティストの作品が出揃います。
感染症拡大の状況に応じ、本展の中止や延期の可能性もございます。適時、ホームページに情報を掲載いたしますので、ご面倒とは存じますが来場前にご確認ください。(東亭 順)


三日月とは陰暦三日の夜の月の事です。つまり月がその身を隠す新月の次の次の日の夜の月。 新月の次の日の月はほとんど目視が出来ない故に三日月の訪れる日を太陰暦の時代には「新月」と言い、 本来は「ついたち」もこの新しく見える月(三日月)を意味しました。日没近くの西の低空に現れると太陽の後を追ようにすぐに沈んでゆく三日月の輝く面積は満月の僅か6%で光度は三百分の一。私たちが日本で三日月を見るその頃イタリアでは太陽が昼に向かって空高く登ろうとしています。誰も月の存在を気に留めません。イタリアで三日月が姿を見せるその頃、深い眠りにまどろむ私たちの夜空からはもうとっくに三日月は去ってしまっています。あなたは三日月を見た事があるでしょうか。あなたはイタリアの三日月を見上げた事があるでしょうか。__WHOによればコロナウイルスによる疾患であるCOVID-19のヒト初発例は2019年12月の中国武漢市から報告されました。しかし2020年11月17日16時50分にネット上に配信された国際ニュース週刊誌『ニューズウィーク 日本版』の記事は「ミラノにある国立がん研究所の研究によると、早いものでは2019年9月の血液サンプルから新型コロナウイルスの抗体が検出された。この知見により、『パンデミックのこれまでの経緯が書き換えられる可能性がある』と研究チームは述べている。」と報じています。私にこの事の真相がわかるわけもありませんし少なくともしばらくは誰にもわからないままなのでしょう。__私たちはちょこんと三日月に腰掛ける事は出来ません。日本の上空にもイタリアの上空にもあの輪郭をした物体が浮いているわけではないのです。月から地球までの距離はおよそ38万4400キロ。月の光が地球に届くには1.255秒 かかる為に私たちの見る三日月は常に過去の三日月だと言いますが、果たして三日月に過去も未来もあるのでしょうか。__2020年の実際がどこまでどうだったのかわかりませんが、イタリアの美術はこれまで実に多くの観光客を惹きつけて来ました。ジョットやダ・ヴィンチ、或いはミケランジェロ・・《モナ・ リザ》だってイタリアで描かれました。しかしもちろんイタリアの美術はルネサンスで始まったわけでも 終わったわけでもありません。約四万年前のフマーネ洞窟では《角が生えたヒト》が描かれ、ポンペイの壁画はかつてこの街を襲った悲劇を代償に今も豊かな色彩を保ち、長い間に種々のキリスト教美術が生み出され、さらにトランスアバンギャルディアやアルテ・ポーヴェラ等の美術運動が多くの人を魅了して来ました。__コロナ禍であろうとなかろうと私たちは何もかもどれもこれもについてイメージする事が出 来ます。しかし私たちのイメージとは一体誰が創造しているのでしょうか。実際に見たからそれが確かなものであると考えるのはロマンのある話かも知れません。実際に見なくとも確かなものだと信じるロマンも大切かも知れません。本展はイメージに彩られた私たちの世界のなりたちとこれからについて語る場で す。いくら手を伸ばそうとも三日月には届かず、イタリアとの距離は延びるばかり。私たちは私たちの知るどの芸術の輪郭にもまたちょこんと腰掛ける事は出来ないのです。(水谷 一)


参考: ニューズウィーク日本版/2020年11月17日(火)16時50分/ “新型コロナは2019年9月にはイタリアに広がっていた──新研究” ゾーイ・ドレウェット/CCCメディアハウス
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/11/20199-1_1.php(参照:2020年12月1日)

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