#15 気がする / 気がした

出品作家:戸谷 森 

​企画:石井 琢郎


会期:2020年9月19日(土) - 2020年10月11日(日) / 土日のみ開場 14:00-18:00

気がする/気がした
気がするの「気」とはなんだろうか。
「気分」とか「気持ち」などの他の言葉の「気」と同じものだろうか。
「~な気がする」は、まだそれがおきてはいない。
「~である」と言い切れない、「思う」より弱い状態。
描かれた丸がそのうちリンゴに見えてくるだろうという予感。
「~な気がした」は、それが過ぎ去って何かが残っている状態。
予感が霧散してはっきりとした形を失った状態。
描かれていたリンゴが、リンゴでなくなって何かが残った状態。
絵の中では、言葉になりかけている状態とそれが崩れてゆく状態は似て見える。
なんの気もしないようにものを作ることは難しい。
絵を描いているあいだは、浮んだり消えたりする「気がする/気がした」と
どう関わればいいのかをずっと考えている気がする。

戸谷 森(Shigeru Toya)

1980年生まれ

2007年多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻修了

<主なグループ展>

2019 「y u k k u r i k o w a s u」トキアートスペース(東京)

2016 「ねじれ、よじれ、もつれ、こじれなどの問題」 秋山画廊 (東京)

2014 「air pocket 3」秋山画廊 (東京)

<主なグループ展>

2020 「半透明な事柄」秋山画廊(東京)

2017 「夜間飛行」秋山画廊 (東京)

2016 「山口浩太郎 戸谷森展 Vol.1」秋山画廊(東京)

2012 「なみゆくながら、付かず離れず」アキバタマビ(東京)

2012 「森啓輔企画vol.1 絵画のPoly morphology」switch point(東京)

2011 「VOCA2011 現代美術の展望」上野の森美術館(東京)

戸谷作品からは、作品と本人とのやりとりの間から生まれるのであろう、何かしらの触覚的な感覚を受ける。
それを、僕の言葉でいうと「手触りの匂い」という表現が近い。それは、戸谷と彼の作品との間に揺らぐ不可視なもので、戸谷と世界との距離の中に求めているものではないかと思う。年々拡大する高度な情報化の波が、より生活の中に入り込んでくる中で、戸谷が 信じている/信じたい ものが「手触りの匂い」であり、それは直接触れるよりも触覚があり、実際に嗅ぐよりも匂ってくるといった、視覚を通して、かつての名も忘れた記憶が感覚として呼び戻されるような“リアリティ=生の実感”であり、彼の生き様自体が、現代社会に対する一つの批判なのだと、僕は勝手に思っている。
そして、直接触れるよりも触覚のあるものを、実在を使う彫刻ではなく色の現象に深く関わる絵画で現前させようとするのが、戸谷の方法論であり世界との距離の取り方なのだろう。
繊細で少し不器用な作家である戸谷とその作品がアズマテイプロジェクトの空間に何を生み出すのか楽しみにしている。 <石井 琢郎 / 彫刻家>

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