#13 モノクロームの欠片
企画:東亭 順
会期:2020年6月6日(土) - 2020年6月14日(日) / 14:00-18:00
本展は4月11日からの開催を予定していましたが、予定を変更しました。また状況により延期・中止になることもあります。
無色透明の酒には、豊な色彩の世界へと導く魔法がかけられていて、良質な振動が感情を揺さぶり色彩を帯びながら時間を包み込んでゆく。網膜に捉えることはできない色彩が、たしかに我々の生活に彩りをもたせている。
一方で、幾千幾万の色彩に囲まれた我々の日常は、昼夜を問わず止まることなく解像度を増していき、その差異への知覚や選別、欲求は際限なく更新され続け、快適さと引き換えに豊さを忘却の彼方におしやっているようだ。胸に湧きあがる煌きは、日常で眼にする無数の色彩と重なって、うつろいながら色褪せて澱のように沈むものとなり、輝きを増しながら変容してゆくものとなり、または、泡が弾けるように消えゆくものとなる。
溢れかえる色彩をうつす視細胞を色眼鏡で覗いたとしたら、それまで見抜けていた物事を捉える事ができないかもしれない。しかし、今まで見過ごしていたであろう、色褪せてしまっていた色彩を拾い上げることが可能になるはずだ。
今展の作家は、紙に鉛筆や木炭、石などの素材を用いいて、モノクローム[ギリシャ語のモノ(単一の)クロモス(色彩)を語源とする]で制作された作品を展示する予定だ。今のシビアな状況下において我々芸術家がどのように思考し、提示するのかを実践する場としたい。(東亭順)
水谷一 (Mizutani Hajime)
様々な土地に赴き滞在・制作を行うアーティスト・イン・レジデンスへ積極的に関わり、表現と〈各現場毎の環境・歴史・習慣〉や〈時間〉との関係、さらに〈鑑賞者という場〉について直感を促す作品を生み出す。展覧会多数。アーティスト・イン・レジデンス参加は13を数える。2019年、文化庁新進芸術家海外研修制度によりベルリンに一年間滞在。
石井琢郎 (Ishii Takuro)
近年では、玉石の内側をくり抜く作品を展開すると同時に映像や写真イメージを用いいた作品を模索。現代社会の中で”もの”と彫刻の可能性を探る。主な展覧会に2019個展「One Stone」アズマテイプロジェクト、2017個展「肌理のつらなり」秋山画廊、2016「KAAT突然ミュージアム」KAAT神奈川芸術劇場など。2009年東京藝術大学大学院博士過程彫刻研究領域修了。
田中啓一郎 (Tanaka Keiichiro)
1990年東京都世田谷区生まれ、神奈川県在住。2015年東京造形大学美術学科絵画専攻領域卒業。その後半年間、アメリカに語学留学を経験。様々な素材を組み合わせてドローイングを行い、立体・絵画を中心にミニマルアートの文脈でアブストラクトな作品を制作。日常生活の中で目にする対象物を、新たな視点で捉え直すことを促している。
影島晋平 (Kageshima Shinpei)
1985年神奈川生まれ、横浜在住。多摩美術大学大学大学院美術研究科絵画専攻修了。
文化概念としての自然と人工物からなる生活環境のイメージを主な題材として絵画の制作を行っている。主な個展に「相模原」Take NInagawa / 東京 /2011、「地面と幾何形体」Take NInagawa / 東京 /2013など。
東亭順 (Azumatei Jun)
文化庁・ポーラ美術財団在外研修員としてスイスとドイツに滞在(2009-2015)。帰国後、横浜を拠点に活動をはじめ2019年より創造的実験場としてアズマテイプロジェクトを始動。記憶や記録を主題に平面やインスタレーション、光を用いた作品を制作。ライヴデュオ:ソフトコンクリートとして新しいライヴリーな表現活動を同時に展開している。